最期の時

失意の春 ― 父親の突然の死と離婚

2016年の春のある日、父親が他界した。結婚し、別々に暮らしていたことで死に目に会えなかった。連絡が来て、すぐに葬式をあげ、その後すぐに離婚してしまった。不幸が続くと言って死ではなく、離婚し実家に帰ってきたのだった。

父の最後の意志 ― リフォームされたトイレ


父親が死の前に何を思っていたかわからないのだが、トイレをリフォームしたのだと言ってピカピカに真新しくリフォームされていた。使った痕跡はない。新しいウォッシュレットのついた便器がピカピカの新品になり、捕まれるよう手摺りをつけたようだった。新しい。父は、トイレをピカピカの新品にし、何を思ってあの世に旅立ったのだろう?さまざまに運命だなんだと悪いことを言う人もいたが、本当に死に目に会えないとは思ってもいないことだった。

3年後の葛藤 ― 想いは新しきまま


死の前にどの程度の介護の話になるかということについて、随分長い間気を揉んでいたのだが、離れて暮らすようになり一度見舞いに実家に帰ったきりだった。結局は、最期の時というものを看取ることもなく、死は訪れたのだった。どれだけ長い間介護などという不幸に心を砕いてきただろうと思うと、どうにも割り切れない気持ちばかりが尾を引いた。父が他界し3年が経ち、ピカピカのまんまだったトイレを使った。

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